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アバター AVATAR  テーマ考 [Cinema 映画]

話題の映画「AVATAR」を今月2度にわたって観て来た。
一言で言うとジェームズキャメロンは何とも凄い映画を創ったものだ。

キャメロンがこの作品に関してどう語っているのか、3Dに関するインタビューしか目にしていないので
詳しくは知らないが、それはかくも明瞭である。



映画の舞台は太陽系外の惑星パンドラであるが、現代の地球を風刺していることは誰が観ても分かる。
パンドラに住むナヴィ族の地から産出される小さな鉱石が莫大な利益をもたらす。

これを開発しようとする地球の企業は株主の利益を優先しながらナヴィ族を傀儡しようという訳である。

しかし、そこに込められたメッセージはパンドラの谷のように深い、あまりに深いのである。
これは現代人にとっては禁断の、そして必見の映画だ。






 






世界の開発企業、投資家にとっては禁断の映画だ。
そこで描かれるのは利益を優先して大自然を破壊し、先住民族の暮らしを破壊して止まない連中だ。


現代社会において巨大金融バブルが炸裂したにも関わらず、世界での乱開発は止まるどころか、さらに前進を続ける。


海外投資の世界で言われるBRICS。ブラジル、ロシア、インド、中国。
急激な経済発展を遂げようとしている、これらの国々でも開発は急激だ。


ブラジルは世界不況の最中でも経済発展で注目を集め続けているが、アマゾンのでの森林破壊はどうなっているだろうか?
焼き畑農業でジャングルが毎年、大規模に焼き払われ、またエネルギー資源開発でさらに自然破壊は急速に進められて行く。


ロシアでシベリア鉄道に乗れば、すれ違う長大な貨物列車にシベリアから切り出された膨大な木材が運ばれて行くのを目にすることが出来る。
ウラジオストクを目指す列車で太平洋から輸出されるとなれば、その行き先その行方は何処なのかは日本人であればよく分かることなのだろう。
シベリアでは木材産業による森林破壊だけではなくて、天然ガス、原油産業などによる開発が止まる所を知らない。
世界にはそれを大量消費する国、人々がいるのである。



しかし世界経済危機の昨今、経済の持ち直し、さらなる発展が最優先課題になり、自然を守る思想が後退しているのではないだろうか。


世界最大の三峡ダムを建設した中国やインドでも同様だ。
エネルギー資源の乱開発は世界で時に狂ったように続けられていく。



キャメロンはこうした現代社会に警鐘を鳴らしている。
惑星パンドラに住むナヴィ族はキャメロンからすれば、かつて北米の主であったアメリカインディアンなのである。髪型も暮らしの風俗もインディアンを彷彿とさせる。



avatar jpg.jpg



















これは北米インディアンに対するオマージュなのである。私はそう受け取った。

いや、北米だけではない、中南米でも、いやアジアアフリカ、世界で、およそ先進国文明が大自然を破壊して
先住民族を追い払い、富も暮らしも収奪してきたことは歴史が証明している。

アマゾンでもシベリアでも、中国、インドでも同様で少数先住民族を押さえつけて乱開発が続けられきたのである。

日本列島でも同様だ。
琉球王国を併合し、アイヌ民族の人々を壊滅に近い状態にして来た歴史の記憶を私たち日本人は封印してしまっている。
都合の悪い記憶は抹殺しておいたがいいということだろうか。



地球の大自然を破壊し多様な生物種を絶滅に追い込み、少数先住民族の暮らしを押しつぶしてきた先進文明人類。
映画にはこの世界の有り様に深い深いオマージュが込められている。



実は自然を不可逆的に破壊するということは自らの文明も破壊することになるのである。

例えば、近代文明の祖であるギリシアは傑出した英知でもって、ギリシア文明を繁栄させたが、
アテネで丘に登れば分かることがある。

アテネの街を360度見渡せるリカヴィトスの丘で夕景時に佇めば絶景なのであるが、
一つ気になることが出て来るだろう。アテネを囲む周囲の山々には森林がほとんど見当たらない。
消え去った森林。ギリシア文明は衰退した。
自然を破壊しすぎると元に戻すのは容易でない。
いや、限りを尽くし過ぎると戻せない。

PIGSの金融危機ではそんなことにまで思いが及んでしまう。



南太平洋のイースター島。そこは草原だけの島である、現在は。
しかし、モアイを切り出すほどの技術を持ち合わせていた頃のイースター島には森林があったとされている。
しかし、小さな島で文明が繁栄し過ぎて森林を不可逆的に破壊して結果は何であっただろうか。

木材はなくなり、海洋民族であったはずのポリネシア民族が船を造ることもできなくなり、
文明は急速に消え去ったのである。
切り出す途中のモアイが数百体レベルで放置されたことが証明している。



惑星パンドラで行われた出来事はまさしく現代社会そのものなのである。
自然との調和を図ることなく資源を収奪することのみの文明はいずれ滅びる。
自然を失えば、私たち人類は生き延びることは出来ない。



過去の文明、現代の文明に思いを馳せ、人類がこの地球という星で生きていくことを私たちは考えさせられる。

映画の結末はここでは申し上げられないが、エンディングの時間帯そこに込められたオマージュの意味を深く受け止めたい映画である。







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コメント 6

MANGO

こんにちは。
私も"AVATAR"見ました。
映像は、最高に楽しめましたが、
いろいろと考えさせられる作品でした。
by MANGO (2010-02-24 15:43) 

uminokodomo

私も見ました!
3Dの物珍しさ+人類の在り方について考えさせられる、
凄い映画でしたね~。
by uminokodomo (2010-02-24 16:12) 

大黒屋

MANGOさん

こんばんは。コメントありがとうございます。
ご覧になりましたか。娯楽作品としては一級品ですがメッセージも
インパクトがありましたよね。

by 大黒屋 (2010-02-24 21:31) 

大黒屋

uminokodomoさん

人類が生き延びるために、自然を破壊し尽くすようなことにならなければいんですけどね。考えさせられましたね。
by 大黒屋 (2010-02-24 21:33) 

ruriy

知り合いが、3Dが激しくて(?)この映画みて気分悪くなったって言ってましたが、どうでしたか?
by ruriy (2010-03-01 13:45) 

大黒屋

ruriyさん

返事がとんでもなく遅くなってしまいました。
ご容赦を。3Dについては早速、書きます。
by 大黒屋 (2010-04-02 12:52) 

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